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遅い更新と拙い文章。


by akiyosci

あなたへ

あなたが離れてから3ヶ月が経とうとしています。

私がよく言っていましたね。「人は必ず死ぬのだから。そもそも死なないはずの人が死んでしまったら、それは悲しむことではあるけれど、必ず人は死ぬのだから、それがいつなのかということだけ。」そしてこうも言いましたね。「いつ死ぬかわからないんだから、いつ死んでもいいように、悔いのないように生きよう」

あなたの人生はどうでしたか。

私は死後の世界は信じません。信じないから、冥福も成仏も祈りません。
ただ死後の世界があるとすれば、それは遺された人々の中にあるのです。

これは全て理屈でした。実態のない理論でした。
私は自説を曲げなければいけません。止めどなく涙が流れます。

あなたの時間は止まりました。
わたしの時間は流れています。時間が流れていることを受け入れられません。

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今日は11月20日。
私たちの婚約記念日ですよ。もう1年が経ちましたよ。

去年の11月14日の夜、福島市の美術館に行った帰り、二人で釜飯を食べながら日本酒を飲みながら、話しましたね。
「私はあなたに惚れています」と伝えましたね。ただ伝えただけでしたね。
でも、帰るときには二人で手をつないでいました。

去年の11月20日の夜、仲間のみんなで打ち上げに飲みに行き、おいしいお酒をしこたま飲みましたね。
あなたはいつものように酔いどれましたね。わたしもけっこう酔っ払いました。
戻ってきてはしゃいでいるあなたを、部屋に抱えていきましたね。

その時の様子、ビデオで撮られていましたよ。

あなたの部屋に連れて行って、二人で床に座って、話しをしましたね。
「日曜日に話したことなんだけど、私と付き合ってくれますか」とあなたに聞きましたね。
どういう返事をしてくれたか、はっきりとは覚えていませんよ。あなたも覚えてないと言っていましたね。
でも、付き合ってくれることになったことだけは覚えています。

それからちょっと用事を済ませて、15分くらいして、またあなたの部屋で話しをしましたね。
「ところで、できればなんだけど、結婚したいと思っています」とあなたに伝えましたよね。
そうしたらあなたは、「あなたの子どもが産みたいです」と答えてくれましたね。

すごく嬉しかった。そして、すごくびっくりした。
あなたが私のことをそう思ってくれていることに気がついていませんでしたよ。

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次の日、日曜日。たくさん話しをしましたね。
夜、ご飯を食べに二人で歩いて行きましたね。その途中でもたくさん話しをしましたね。

あなたは言いましたね。
「私のどこが好きになったのかがはっきりとわからないんでしょ。いまは私のことをすごく好きでいてくれてると思うんだけど、それが冷めちゃってからも私のことを愛してくれるかどうかが心配。」

いまでも、あなたのどこが好きになったのかはわかりません。
何か理由があって好きになったのではないように思います。
あなたという存在が好きで好きでたまらなかったのです。

尊敬できるところがたくさんあって、お茶目なところや物知らずなところもあって。かわいくて。

一緒にいて、緊張しなかった。自分を取り繕わなくて良かった。
自分でいられるのが、あなたでした。

だから、あなたとずっと一緒にいたいと思ったのだと思います。

二人でよく話していましたね。「2年間の新婚旅行」と。そのあとは50年間一緒だと。
去年の年末、メールで伝えましたね。「日本で過ごす独身最後の年越し」と。

また一人で年を越しますよ。
あなたがいないこれからの時間、どうしたらいいのでしょう。

あなたが私に持ってた印象を伝えてくれたことがありますね。「この人は私がいればもっと良くなる」と思ってくれましたね。

わたしもそれを楽しみにしていました。そして、あなたのために良い男になると決めていました。

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あなたがいなくなってから、また情けない人間になってしまいましたよ。
あなたの惚れてくれた男は、こんなだらしのない人間なのです。

でも、あなたがいなくても、あなたの思っていたように良い男になります。
努力をしろ、と言うことですよね。あなたに恥じない男になりますよ。見ててください。

一方で、この世に未練がなくなりました。長生きしたいと思わなくなりました。
元々あまり未練はなかったのだけど、あなたと出会ってから、将来について希望を持つようになっていました。
希望と、計画と。

あなたは計画を立てるのが好きだからと、結婚してからの計画を立てていましたね。
いつ子どもを産んで、教育にいくらかかって、いつ家を買って、お互いの両親の介護が、とか。

それに、2年後の1月の計画も立ててましたね。
日本に帰ってその足でご実家にご挨拶に伺う。
私が自分の実家に帰ったらあなたがうちの両親に挨拶に来て、ちょこっと観光してあなたが先に戻る。
私が両親を連れて行き、あなたの両親と食事会をする。
場所ももう決めてましたね。豆腐会席、楽しみでしたね。

婚姻届を出すのは、1月23日にするはずでしたね。
本籍地をどうしようか、話してましたね。
あなたは、自分の実家、その町が好きでしたね。
わたしも自分のルーツの土地が好きだったから、どちらにしようか、また考えようねと言いましたね。

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あなたがいなくなってから、こちらの友達に言われました。
私とあなたと二人でいるところを見て、すごく普通だったと。すごく自然だったと。
私たち二人は、周りの人にはそういう関係に見えていたのですよ。

二人で喧嘩してるんだと話したら、友達はびっくりしてましたよ。離れててよく喧嘩できるなと。
喧嘩できるくらいコミュニケートしてましたね。そして遠慮しませんでしたね。

喧嘩したら、私が謝るのがルールでしたね。喧嘩して喧嘩して、お互いに自分の思ってることを隠さないで。
思っていることを隠すのは禁止でしたね。何も言わなくてもわかる、という考えは禁止でしたね。

どうしてこんなことで怒るんだろう、と思ったこともありました。でもそれは、一緒に暮らすようになってからのことを思って、だと教えてくれましたね。いままでずっと一人だった、社会性のない人間にとって、いろいろと学ぶことが多かったですよ。

社会性。あなたは人と関わるのが好きでしたね。関わるのが好きというか、人間相手だと生き生きしていましたね。
でも、人見知りなんですよね。人に紹介されるのは好きじゃないと言っていましたね。
たくさんの人にあなたを会わせたかったですよ。こんな素敵な人、つまりあなたがこの世の中にいるんだということを教えたかったですよ。

あなたの影響でいろいろと世界が広がりました。
あなたと一緒にするはずだったことがたくさん残りました。

年明け、キリマンジャロに登ってきますよ。登り切れるかはわからないけど。
あなたの使っていたタオルを持って行きますよ。あなたの着ていたジャケットを着ていきますよ。

日本に戻ったら、あなたと一緒に潜るために、ダイビングのライセンスを取る予定でしたね。
どうしようか、まだ迷っています。

結婚式をしなかったとしても、結婚写真は撮る予定でいましたね。
世田谷の、私のお世話になっている写真屋さんで撮ってもらうつもりでいましたよ。

あなたが言っていました。「登山とかダイビングとかすると、その人の本質が出る」と。
私の本質は、どうでしょうね。あなたに見てもらうことができませんでしたよ。

人生の目的がなくなりました。
私はあなたに物心両面で依存していたんですね。あなたがいなくなってから気がつきました。

二人の人生の計画で、私が大学院を出るまではあなたが仕事をして、私が仕事に就いたら今度はあなたが勉強したいと言っていましたね。
哲学を学びたいと言っていましたね。

あなたが書いたことがありましたね。「夢のたね」に書いた、あなたの夢です。

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「いつまでもべんきょうねっしんなかわいいおばあちゃんになりたい。」
「こどもたちといっしょにまなんでせいちょうしていきたい。」
「だいすきなひとといつまでもいっしょにいきていきたい。」

このことを思い出すと、私はどうしても泣いてしまいます。
あなたにこの夢を果たさせたかった。一緒に夢に向かって歩んでいきたかった。

あなたと私は同じ方向を向いていたのです。育ってきた環境も考え方も全然違うけど、同じ方向を向いていたのです。
同じ方向を向いていたから、わかり合えたのだと思います。
同じ方向を向いている、つまり根っこの考え方が一緒。物事に対する考え方は、本当によく似ていましたね。

あなたは私に、怖い父親になってほしいと言っていましたね。
あなたは、あなたのお父さんが大好きでしたね。あなたはあなたの家族が大好きでしたね。

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二人で旅をしたとき、少しお酒に酔ったあなたは、あなたのお父さんのことを話しながら、ぼろぼろ泣いていましたね。
あなたは本当に素敵な、優しい、人間に対して真剣な人でしたね。

そんなあなたを、私は私の自慢の両親の娘にもしたかった。
あなたの大好きな両親を、私の両親にもしたかった。
私の兄と同じ歳の妹ができるはずでしたね。
もうすぐ生まれる姪っ子が楽しみでしたね。
わたしが「姪っ子だー」と喜んだら、あなたに「まだ気が早い」と言われましたね。

家族が増えるのが楽しみでした。

私は人間が嫌いです。ますます嫌いになりそうです。
そして、人の幸せを素直に喜べなくなりました。

あなたの七回忌の時、私はあなたの年上になります。

あなたと離れた前の日はあなたの誕生日で、電話で話をしましたね。
「言っておくけど、私はあなたの年上になるつもりはないから」とあなたに伝えましたよね。

この気持ちはいまでも変わりません。もう少し待っていてください。
天国とかあの世とか死後の世界とか来世とか、そういうものがもしあるんだったら、今度こそ一緒になろうね。

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by akiyosci | 2011-11-20 07:28 | 日常